ない過払い金|主文 原告らの請求をいずれも棄却する。

過払い金の割合であったE医師が肺がんにより死亡し たことにつき,被告病院の呼吸器科医師には,E医師が,職場における定期健康 診断の一環として,平成14年及び平成15年に撮影された胸部X線写真の異常 陰影を見落とした注意義務違反があるなどと主張し,E医師の相続人でである原告 らが,被告に対し,債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償及 び平成14年度の定期健康診断の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に よる遅延損害金の支払を求めた事案でである。

平成14年6月27日,E医師は,被告病院が実施した定期健康診断(以 下「本件健康診断」という。)の一環として,胸部X線検査を受検した。
なお,当該検査は,直接撮影(被写体を通過したX線が,一対の増感紙上 に可視の蛍光像を作り,これが当該増感紙の間に挟まれたフィルムに直接 写し出される撮影方法)の方法により行われた。
イ被告病院呼吸器科医長のF医師は,E医師の胸部X線写真(以下「14 年写真」という。)を含む平成14年度の本件健康診断で撮影された71 6枚の胸部X線写真を,約2時間弱かけて読影した。
平成14年当時の被告病院における定期健康診断で撮影された胸部X線 写真の読影方法は,写真を上段に4枚,下段に4枚の計8枚差し込み可能 なシャウカステン1台(以下「シャウカステンA」という。)と,写真を 上段に6枚,下段に6枚の計12枚差し込み可能なシャウカステン1台(以 下「シャウカステンB」という。)が並べられた被告病院放射線科読影室 において,補助者(被告病院庶務係)がシャウカステンに写真を計20 枚差し込む,F医師がシャウカステンAの上段の写真を左から右に,下 段の写真を左から右に読影し,次に,シャウカステンBの上段の写真を左 から右に,下段の写真を左から右に読影し,異常と判断した写真は,F医 師がシャウカステンから引き抜いて取り置く,F医師がシャウカステン Aの読影を終え,シャウカステンBの読影を行っている間に,補助者がシ ャウカステンAの写真の差し替えを行い,F医師がシャウカステンBの読 影を終えて再びシャウカステンAの読影を行っている間に,補助者がシャ ウカステンBの写真の差し替えを行う,というものであった(乙A6の1 及び2)。
F医師は,E医師の14年写真について,異常なしと判断し,被告病院 は「健康診断票」に, よって,E医師にこれを通知した(甲A2)。
ウ平成15年6月5日,E医師は,本件健康診断の一環として,胸部X線 検査を受検した。
当該検査も,直接撮影の方法により行われた。
エF医師は,E医師の胸部X線写真(以下「15年写真」という。)を含 む平成15年度の本件健康診断で撮影された707枚の胸部X線写真を, 約2時間弱かけて読影した。
平成15年当時の被告病院における定期健康診断で撮影された胸部X線 写真の読影方法も,平成14年当時のものと同様であった。
F医師は,E医師の15年写真について,異常なしと判断し,被告病院 は,「健康診断票」によって,E医師にこれを通知した(甲A2)。
オ平成16年6月22日,E医師は,本件健康診断の一環として,胸部X 線検査を受検した。
当該検査を担当した被告病院の技師が,撮影されたE 医師の胸部X線写真(以下「16年写真」という。)の右上肺野に異常陰 影を発見したため,その旨E医師に伝え,16年写真を見せた。
被告病院において,E医師に対し,同日にCT検査が,同月24日には 経気管支肺生検及びリンパ節の細胞診検査が実施され,E医師は,肺腺が んと診断された(甲A3,乙A1の6・21・23ないし26頁)。
カその後,E医師は,同月28日に抗がん剤治療のため被告病院に入院し たのを皮切りに,抗がん剤治療,手術又は放射線治療のため,計10回被 告病院に入院したが(最終退院日は平成18年8月11日),この間,入 院中の診察又は外来診察において,被告病院の医師らが勧めた治療又は検 査を断ったり,被告病院の医師が服用に消極的であった抗がん剤(イレッ サ錠)の服用を強く希望して服用したことがあった(乙A1の9ないし1 2・15・18・19頁,A2の82・120・151・157・179 ・184・361・369・371・375・376・385頁)。

債務の存在

前提事実及び争点に係る当事者の主張は,次の1のとおり付加・補正し,2のとおり当審における原告らの追加的主張,3のとおり当審における証人の追加的主張を付加するほかは,原決定の「理由」中の「第1 事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。
1 原決定の「第1 事案の概要」部分の付加・補正
(1) 原決定2頁18行目の次に行を改めて,次のとおり加える。
「なお,共同通信社海外部は,本件記事を別紙のとおり英訳して,これを海外に配信したが,翌日か翌々日,この英文の記事の内,「tax sources said」は誤訳であるとの訂正記事を配信した。」
(2) 同3頁22行目「原告らの税務申告に関する情報」の次に「(納税者の身元,同人の収入源又は金額で,当該納税者の納税申告が過去,現在又は将来において検査されるか又はその他の調査又は手続の対象となるか否かを問わないものとし,また,納税申告に関してか又はいずれかの者の債務の存在・又はその存在の可能性(又はその金額)に関して,本章に基づく,税金,加算税,利息税,罰金税,科料税又はその他の付加税又は罰則税の目的上,財務長官が受領,記録,作成するか又はそれに対して提供されるか又はそれによって収集されるその他のデータ[タイトル26セクション6103(b)(2)(A)])」を加える。


キ平成18年9月4日,E医師は,肺がんによる呼吸不全のため,満62 歳で死亡した(甲A1,C1)。
ク平成16年度以降,被告病院は,本件健康診断で撮影された胸部X線写 真の読影について,読影方法に変更はないものの,読影者を1名(放射線 科部長)増員し,読影者ごとに2名の補助者が写真の差し替えを行うこと とした。
(3) 医学的知見−肺がんの病期分類(甲B8の1,B9の2)
肺がんの病期は,原発腫瘍の大きさ・進展度(T),リンパ節への転移の 有無(N),他臓器などへの遠隔転移の有無(M)の各因子によって,次の ように,0期から期まで分類される(TNM分類)。
ア0期
腫瘍が上皮内にとどまる(TisN0M0)。
イA期
腫瘍の最大径が3cm以下で,肺組織又は臓側胸膜に囲まれており,気管 支鏡的にがん浸潤が主気管支に及んでいない(T1N0M0)。
ウB期
腫瘍が,最大径が3cmを越えている,主気管支に浸潤が及ぶが,腫 瘍の中枢側が気管分枝部より2cm以上離れている,臓側胸膜に浸潤があ る,肺門に及ぶ無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが一側肺全体に及ばな いもの,のいずれかを満たす(T2N0M0)。
エA期
原発腫瘍の大きさ・進展度はT1であるが,同側気管支周囲リンパ節, 同側肺門リンパ節,肺内リンパ節への転移がある(T1N1M0)。
オB期(以下の状態のいずれか)
原発腫瘍の大きさ・進展度はT2であるが,リンパ節転移はN1である (T2N1M0)。
腫瘍が,隣接臓器(胸膜,横隔膜,縦隔胸膜,壁側 心膜)のいずれかに直接浸潤している,気管分枝部から2cm未満に及ぶ が気管分枝部に浸潤がない,無気肺あるいは閉塞性肺炎が一側肺全体に 及ぶ,のいずれかを満たす(T3N0M0)。
カA期(以下の状態のいずれか)
原発腫瘍の大きさ・進展度はT1又はT2であるが,リンパ節転移は同 側縦隔リンパ節,気管分枝部リンパ節に及ぶ(T1N2M0,T2N2M 0)。
原発腫瘍の大きさ・進展度はT3であり,リンパ節転移はN1かN 2である(T3N1M0,T3N2M0)。
キB期(以下の状態のいずれか)
原発腫瘍の大きさ・進展度は関係なく,リンパ節転移が,対側縦隔リン パ節,対側肺門リンパ節,同側又は対側斜角筋前リンパ節,鎖骨上窩リン パ節に及ぶ(N3M0)。
腫瘍が,縦隔,心臓,大血管,気管,食道, 椎体,気管分枝部に浸潤している,同一肺葉内に存在する腫瘍結節, 悪性胸水を伴う,のいずれかを満たし,リンパ節転移は関係ないが,遠隔 転移はない(T4M0)。
原発腫瘍の大きさ・進展度やリンパ節転移は関係なく,遠隔転移がある (M1)。
2 争点
(1) 14年写真及び15年写真の異常陰影を見落とし精密検査を指示しなかっ た注意義務違反の存否
(2) 平成14年度及び平成15年度の本件健康診断において二重読影(2人の 医師がおのおの独立して読影すること)を実施しなかった注意義務違反の存 否
(3) 因果関係の存否
(4) 損害
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(14年写真及び15年写真の異常陰影を見落とし精密検査を指 示しなかった注意義務違反の存否)について
(原告らの主張)
ア(ア) 健康診断における胸部X線検査は,肺がんを始めとする呼吸器疾患 のスクリーニング検査として必要不可欠である。
肺腺がん等肺野に発生 する肺がんについては,肺野には知覚神経が存在しないため,早期段階 では自覚症状に乏しいことから,胸部X線検査は,特に肺野に発生する 肺がんの発見に有効である。
肺がんは,早期発見早期手術により,完治 が期待できる。
一方,進行した肺がんの場合は,手術が困難な上,手術 をしても,他のがんと比べて完治が困難である。
したがって,肺がんは, 胸部X線検査によって早期に発見し,治療することが大きく予後を左右 する。
(イ) 職場の定期健康診断において撮影された胸部X線写真を読影する医 師には,当該写真上の異常陰影の有無を正しく読影し(読影の際には, 特に鎖骨や肋骨など骨が重なる部分については,画像上の左右の濃度差 に配慮するなどして,より注意して慎重に読影しなければならない。


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事実
経過
平成

当事者
当事者
アE医師は,昭和18年11月7日生まれの男性であり,被告病院に形成 外科医長として勤務していた(甲C1,乙C1)。
イ原告Aは,E医師の妻であり,原告B,原告C及び原告Dは,いずれも E医師の子である(甲C1)。
ウ被告は,名古屋市a区b町c丁目d番e号において,被告病院を開設, 運営している。